こんにちは、「南紀ローカル通信」の枯木屋ユージンです
今回の、本の紹介は小説『戈壁の匈奴』です
2001年 出版
司馬遼太郎 著
遠い他国の美しい女を抱きたい者、この指と~まれ
出典:SuA Jo Pixabay
司馬遼太郎の短編八本を収録した『ペルシャの妖術師』の中の『戈壁の匈奴(ごびのきょうど)』を紹介します。
この八本の内容はバラエティーに富み、時代や場所は様々です。
司馬遼太郎の『竜馬がゆく』のような長編歴史小説とは別物ですね。
なかでも(チンギス・ハーン)が、まったくの私利私欲で他国を侵略してゆく様を描いた、「戈壁の匈奴」が一番面白かった。
チンギス・ハーンは時代も古く、日本の歴史上の人物でもないからイメージしにくかったのですが、私としては噓でもいいからチンギス・ハーンのイメージを持ちたかったわけです。
それには、この「戈壁の匈奴」はうってつけでした。
いにしえのモンゴル、中国、そしてヨーロッパまでを思い描かせてくれ、騎馬民族のダイナミズムに胸躍らせてくれる大きな短編小説。
もっとも興味深かったのはチンギス・ハーンの遠征の動機。
「遠い他国の美しい女を抱きたい者は、この指と~まれ」
私の記憶では、こんな乗りで始まります。まさか?
事実であるはずはないでしょうが、これほどまでに巨大で絶大な権力者の胸の底の底を、誰も知りようがありません。
進撃を続けるチンギス・ハーンの男としての魅力と人としての面白さ、頭の良さと感の良さ。そして残虐性。
侵略した国の女たちを、目の前に並べさせ、期待とは違っただけでその場で処刑させるくだりは、忘れられません。
大作歴史小説も 面白いけれど、こう言った短編はギュッと凝縮された形で心に残る。
司馬遼太郎の小説を読むたびに、つい勘違いします。
この人は偶然この場に居合わせて、それを書いているのだなと。
騙されてはいけません。
【講釈師見てきたような噓を言い】 この一説が頭に浮かびます。
いや、面白かった。
ではまた、次の記事でお会いしましょう
2022年3月19日 記