こんにちは、「南紀ローカル通信」の枯木屋ユージンです
今回は、ジョン・ランディス監督の映画『ブルース・ブラザース』のレビューです
公開:1980年(アメリカ合衆国)133分
監督:ジョン・ランディス
出演:ジョン・ベルーシ(ジョリエット)、ダン・エイクロイド(エルウッド)
出典:Jürgen Polle Pixabay
ハチャメチャなコメディでミュージカルなのにスタイリッシュ
1981年の公開当時
大ヒットして評判になっていた映画です。
アメリカのロックやブルース音楽に何故かやたら詳しい友人がいて「面白かった」と言いました 。
そんな事がなかったら、自分からわざわざ映画館に足を運んで観ていなかった映画のような気もします。
理由は二つ
まずひとつは、ハチャメチャなコメディと聞いていたからです。
もちろんコントも、お笑いも、コメディも大好きですが、どうもアメリカ映画のハチャメチャなコメディと銘打っているものの中には、まったくついてゆけない物がたまにあります。
それは、お国柄と言う人もいますが。
とにかく、笑えないどころか不快であったりします。
あとひとつは、どうもミュージカル映画らしい、ということです。
もちろん音楽を聴くのも、ダンスを観るのも大好きなのに、ミュージカル映画には入っていけない。
これが、劇場に足を運んで生のミュージカルとなると、話は別ですが。
でも、ストーリーの中に音楽が織り込まれているような映画は大好きです。
1979年の『オール・ザット・ジャズ』 2000年の『オー・ブラザー!』なんか本当によかった。
こんなふたつの懸念をもって『ブルース・ブラザース』を観てどうだったのか?
いや、本当に楽しい映画でした。
始まってすぐに大笑いして入り込んでしまいました。確かに懸念していた通りのハチャメチャだしミュージカルだったのですが。
簡単な映画のストーリー
強盗の罪で、刑務所に入っていた(ジョリエット)は、3年の刑期を終え出所。
弟の(エルウッド)と共に育ててくれた孤児院を訪れます。
しかし、孤児院は5000ドルの固定資産税を支払えず、困窮していることを知りました。
そこで、この兄弟ブルース・ブラザースは、5000ドルをどうにかして自分たちが稼いで支払うと、心に決めます。
この5000ドルという金額も微妙でなにか可笑しい。
どうやって5000ドルを稼ぐか?悩むブルース・ブラザースは、プロテスタント教会へ行き、そこで歌い踊る信者たちを観て、神の啓示を受け「バンドだ!」と叫びました。
ブルースバンドを結成してお金を稼ぐ事を思いついたのです。
そこから、昔馴染みのバンドマンたちを探し集める旅となりました。
どこか『七人の侍』みたいかな?
この兄弟は、細かな法律や社会的常識などまったく頭にないので、ゆく先々でトラブルをおこし、警察、州兵、ネオナチのような団体などに追われ続けるハメになります。
しかし、最後はコンサートを開催し、レコード会社とも契約となり、固定資産税を支払ったところで御用となります。
ラストシーンは刑務所に入った兄弟とバンドメンバーが(エルビス・プレスリー)の「監獄ロック」を演奏して、めでたく?エンド。
この映画、ハチャメチャ
と言ってもただハチャメチャと言う訳ではなく、そのハチャメチャなギャグはストーリーに小さなフックが引っ掛かっているのです。
それでもって孤児院のシスターがこん棒をぶん回したり、何者か分からない女がバズーカ砲をぶっ放したりと派手ですが、ギャグはそんな派手なものだけではなく、登場している人物の会話や距離感なんかもジワっと味があり、可笑しみが込み上げます。
そして、ミュージカルシーン
なんと言っても、映画のタイトルが『ブルース・ブラザース』なんだから、当然ストーリーの上で音楽シーンが幾つも出てくる。これがいい。
そして、私が懸念していた、登場人物がいきなり歌いだし踊りだす音楽シーンもいくつかあります。
がしかし、これもいい。思わず乗ってしまいます。いわゆるミュージカル映画とは違うジャンルの曲だからかもしれません。ソウルミュージックにR&B、純粋にミュージックビデオを鑑賞している感じです。
私ですら、見覚えのある顔のアーティストや聴き覚えのある曲が次々登場して豪華でした。
こんな説明だけでは漠然としていますよね
ではもう少し具体的に、どんな所がどんな風に良かったのか、印象に残っているシーンなどを幾つかお話ししましょう。
映画冒頭
ジョリエットが、書類や持ち物の出所手続きをするのですが、ここで既に軽いコントになっていて、もうこの映画受け入れOKになってしまいました。
孤児院のシスター
が兄弟の素行の悪さに怒り、こん棒を振り回すと、無頼の二人が赤ん坊のように怯えて、ホント可笑しい。
教会で神の啓示
を受けるシーン、単純でバカバカしくて良いのです。
ネオナチ団体
が行く手の橋を封鎖して、決起集会をしています。
自動車の長い停滞の列が続いていて、警察も状況を見守っているだけ。
そこを兄弟の車が、列の後ろから抜け出し、橋上をぶっ飛ばして走り抜ける。
ネオナチの構成員たちは、たまらずシンクロナイズドスイミング(今はアーティスティックスイミング)のように次々と川に飛び込みます。胸のすく場面。
ブルース・ブラザースは法を無視しているけど、庶民の味方、正義の味方。
いい脚本だな。
ミュージカルシーン
が幾つも登場しますが、音楽のジャンルの好き嫌いはあれ、誰もがこの時は乗って観られるのではないかと、私は思っています。
田舎町のカントリー&ウエスタンの店でブルース・ブラザースバンドが演奏するくだりなんかは、最も好きなところかもしれません。
兄弟はセンスの良い都会的な音楽をを目指しているのか? 演奏しても店の客にはまったく受けません。
仕方なくローハイド(クリント・イーストウッドが無名だった頃に出演していた、西部劇のテレビドラマ)を演奏。これが物凄く受ける。
しかし、こんな曲が受けることが気に入らないジョリエットは、仏頂面で歌い続ける。
笑えるし、曲もいいし、しみじみすます。
映画終盤のブルース・ブラザースの最後のコンサート、山場ですね。
でも、兄弟はいろいろあってまだ会場に現れません。
そこで場をつなぐ為、キャブ・キャロウェイが歌いだします。
この老ジャズ・シンガーも、私が顔も曲も知っているほど有名人です。
この人が歌いだす前奏の時の動き。なんだこれ? 何とも言えず可笑しい、真似のできない動き。
出典:William White Unsplash
そしていよいよブルース・ブラザースの登場
この二人のお揃いのコスチュームがカッコイイ。ほぼ映画全編この服装なわけですが、誰もが何処かで見たことのある、ブラックスーツ、黒のサングラス、黒の帽子。
シンプルすぎててお笑いだけど、いいんですね。
演奏が始まり、ふたりの動きは軽快でコミカル。
ジョン・ベルーシはあんな身体つきで宙返り出来るし、ダン・エイクロイドのハーモニカを吹きながらのステップは観ていて飽きません。
この映画で不満と言えば
ブルース・ブラザースの演奏シーンを、まだまだ観たかったことかな。
あとひとつ、警察やら軍隊が総出になって、やっと兄弟を逮捕できますが、いくらなんでも大袈裟すぎたんじゃないか? (ゴジラ映画)のようになってしまった。最後は、もう少し引き締めて欲しかった。
と言う訳で、いろんな要素が結合している映画です。
音楽、コメディ、バカバカしさとドタバタの中のセンスの良さ。
もしかしたら画面上には現れないヒューマニズム。
いい映画はたまにありますが、カッコイイ映画は滅多とありません。
ブルース・ブラザースはそのカッコイイ映画の一本です。カッコイイばかり連発してしまいました。
レビューは以上です。
どうでしょうか、あなたも黒ずくめの二人に会いたくなったでしょうか?
ではまた、次の記事でお会いしましょう
2021年11月9日 記