南紀ローカル通信

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いい歳をして怖がるな、映画『リング』

こんにちは、「南紀ローカル通信」の枯木屋ユージンです

 

今回は、中田秀夫監督の映画『リング』のレビューです

 

公開:1998年(日本)

監督:中田秀夫

脚本:高橋洋

原作:鈴木光司

出演:松嶋菜々子(浅川玲子)、真田広之(高山竜司)

 

あまりにも有名な、日本ホラー映画 

 

出典:Gary Meulemans Unsplash

 

古井戸に突き落とされ

殺されてしまった貞子が、怨念で念写したビデオテープ。 

それを見た者は、ダビングして誰かに見せないと死んでしまうというストーリー。 

なんだか、聞いたことがあるような都市伝説が、ジンジン怖くなっていきます。 

 

レビューを書くために、5年ぶりに『リング』を観直しました。 

これで3回目になります。 

さすがに3回目だと、そんなに怖くなくなってしまいました。 

それに、ストーリーを進めるシーンなんかで、少し段取りっぽく感じるところがあったりして、こうして欲しいああして欲しいという部分が、はっきりしてきます。 

そんなところが全くない映画など存在しませんが。 

それとは逆に、本当によく出来た映画だと更に深く感心させられます。 

 

私が最高に怖かったホラー映画

と言えば、小学校に通いはじめた頃に観た『四谷怪談』と『エクソシスト』、そしてこの『リング』 

 

レンタルビデオを借りて、真夜中に一人で観ていました。 

その間、何度か後ろを振り返りましたよ。いい歳をした大人が。 

 

日本のホラー映画でベストワンじゃないかなと思います。 

ホラー映画のなかでと言うより、日本映画全体の中でも相当上位でしょう。 

 

怖いと言うことは、結局センスがいいと言うことです。これなしに怖い映画は作れません。 

話が面白いだけでは、面白い映画と言うだけで、怖い映画にはならないのです。 

幾つもそんなシーンが出てきます。 

 

例えば

映画の冒頭で、女子高生二人が呪いのビデオの都市伝説について話しているシーン。 

ただそれだけの、無防備とさえ感じさせる出だしです。 

これがもうすでに怖い。

無意識に恐怖を感じさせるように周到に作られているのでしょう。 

笑い話として喋っている二人だけれど、しゃれにならない。 

ホラー映画と知らずに観ていても怖いのではないか? 

このシーンのお陰で(プロ野球中継が怖い)ものなのだと、知ったのです。 

 

怪奇な死に方をした男女のニュース映像を、早送りにしたりスローにしたり逆回転したりして、チェックするシーン。 

 

登場人物のセリフや悲鳴でなく、息遣いにクローズアップしていくようなカットの積み重ね。 

 

貞子が近づいて来ていると思われる時の、効果音。 

 

街のベンチに座る(高山竜司、大学の哲学科講師)の前で立ち止まる謎の女性の足元。 

これはもしかして高山竜司の内面の描写かと思ったのですが、映画の終盤に現れた貞子が履いている靴と同じに見えます。 

 

それになんと言っても貞子が念写した(呪いのビデオ)の映像そのもの 

凍りつくようにして見ていました。 

これだけでもう十分怖くて、一つの作品のように感じます。

全編ほぼ白黒でザラついた映像。 

意味不明な場所や人々、大きな頭巾のような物で顔を隠された男が何かを指さす、虫のように蠢く文章の文字、二つの楕円形の鏡に映る大人の女と少女、人間の物とは思えない眼球に貞の文字、そして最後に古井戸だけの映像で終わります。

この映像だけで疲れる。 

センス抜群ですよね。 

 

映画が面白くて

鈴木光司の原作まで読んでしまいました。 

やっぱり面白い。

 

そこで、誰でも興味を持つのが原作と映画の違いです

一番の違いは、事件を追うテレビ局のディレクター(浅川玲子)は女性ではなく男性です。我が子を、貞子から守ろうとするのは父親なのです。 

この違いは、大きな意味合いがあるのではないか。 

最後にとうとう、浅川玲子は古井戸の底で貞子の白骨化した遺体を発見し、恐怖におののきますが、思わず頭蓋骨を抱きしめるのです。 

女性が女性を抱きしめる。意味ありげな気がしますが、考えすぎか? 

 

或いは、恐ろしい物事に立ち向かうのは、女性のほうがよけいに痛々しいと言うことになるのでしょうか。

 

母親が子供を守るため、底なし沼の底に向かって車を走らせて行くように感じるラストは、『ターミネーター』を思い出しました。 

 

他には

違いと言うより、映画のオリジナル性と言った方がいいかもしれない部分。 

それがさっきから強調しているセンスの良さです。 

 

呪いのビデオのなかに出てくる楕円形の鏡 貞子のあまりにも奇怪な歩き方 古井戸から這い上がり、ついにブラウン管から出て来る、あの決定的なシーン 

 

出典:Patrick Schneider Unsplash

 

これらのオリジナルシーンがあるからこそ、映画『リング』が小説『リング』に負けないほどの価値があるのではないでしょうか。 

 

この映画のあと、リングは様々に発展し、シリーズ化したり、外国でリメイクされたりしましたが、私は「映画リング」はこのリングだけで他には要らないと思っています。 

あとの作品がどうのこうのではなく、リングはリングだけで飾っておきたい。 

そんな気分だし、そんな映画なのです。 

 

ホラー映画なんか観たくない人も、もしかして『リング』を観てみたいと思われたでしょうか? 

 

レビューは以上です。

 

ではまた、次の記事でお会いしましょう

 

2021月9月18日 記

 

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