こんにちは、「南紀ローカル通信」の枯木屋ユージンです
今回の、本の紹介は小説『楽園のカンヴァス』です
2012年 出版
原田マハ 著
出典:Albrecht Fietz Pixabay
この本自体が一つのジャンルだ
ある日、ふらっと本屋に立ち寄ると、なぜかこの本の文庫版が平積みされていました。
文庫化されてからも、何年か経っているのに。
ルソーの絵とタイトルに惹かれて手に取ってみると、どうやらミステリーらしい。
面白そうだと思ってそのままカウンターへ直行です。
ん〜、面白かった。
本屋の店員さんに「ありがとう」です。
せっかくのミステリー小説でもあるし、ざっくりとだけ筋立てを説明しておきましょう。
スイスに住む謎の大富豪
コンラート・バイラーは、【アンリ・ルソー】が描いた絵画『夢』に酷似した作品を所有しています。
その絵の価値と真偽の鑑定を二人のキュレーター、ニューヨーク近代美術館のティム・W・ブラウンと大原美術館の早川織絵に依頼。
報酬は、正しい判断を下した者に作品の全ての権利を譲渡することでした。
いろいろな謎が組み合わされていて飽きません。
この大富豪も謎だし(ミステリー小説の王道らしくていい)、この二人が指名された経緯も謎、当然この美術作品自体が謎です。
状況や結果によっては巨額のお金が動くことにもなり、どこかの組織も裏で動いているようです。
ふたりのキュレーターに、判断材料としてバイラー側から提示されたのが(ルソーに関して書かれた謎の書籍)。
いつどこで誰によって書かれた物かさえ分かりません。
これがまた、小説の中の小説【劇中劇】のようで引き込まれます。
このミステリー小説で
面白いと感じた大きな要因の一つは、アクションや犯罪方向に振れていないことでしょうか。
私たちには馴染みのないキュレーターという職業(簡単に言えばアート作品を扱う専門職)。これをもってして、すでに十分ミステリーの世界に連れて行ってくれます。
キュレーターを通して、ルソーの絵画にピンポイントで焦点を当てる。
ストーリーが進めば、ルソーの絵そのものがミステリー。
この本自体が一つのジャンルのようにさえ思えます。
美術には幼い頃から多少興味は持っていました。
しかしこれからは、もっと時間をかけてアート作品の前に立ち、もっと何かを感じとれるのではないかという楽しみを、この本は気づかせてくれます。
ルソーを真似て、何十年ぶりかで絵を描いてみようかな。
ではまた、次の記事でお会いしましょう
2022年3月28日 記