こんにちは、「南紀ローカル通信」の枯木屋ユージンです
スキューバダイビングを趣味にしている人の中には、今【このポイントにエントリーするかしないか】、判断に迷った事のある人はいないでしょうか?
今回はそんなお話をしてみようと思います。
バディ潜水 エントリー可能か?
スキューバダイビングは手軽にできる趣味ではないし、費用だって安くはありません。
そこで思いつくのは、バディ潜水です。
ガイドフィーが無くなる訳ですから、費用は結構抑えられます。
ただ昨今は、アドバンスオープンウォーターの資格が必要だったり、ショップ自体がバディ潜水させてくれない所もあります。
そしてその前に、プロのガイドなしにダイビングするという不安があります。
それともう一つは、そんなタイミングよくバディがいるのかという課題もあります。
私の場合は、妻もダイビングをしていたので都合よく助かりました。
しかし、一家でダイビングフィーが2倍となるので、なおさらバディ潜水を考えざるを得なかったのです。
最初、妻と二人っきりで潜りだしたのは地元の白浜でした。
朝、今から夫婦で行くとショップに電話を入れます。近所なので天気や状況を観てその日に決めるのです。
行ってみると、大阪から予約のあったダイバーがキャンセルになり、乗船は私たち夫婦二人だけになりました。
それでいい。ダイビングは人が少ないに越したことはありません。
ガイドの(荒木君:仮名)は、それで邪魔くさくなったのか、「もうガイドなしで潜りましょう」と、言いました。
ポイントまで自分がボートを運転してくれると。
荒木君は移住の時にも世話を焼いてくれた人物です。
そうか、どこも何度か潜っているポイントだし安くなるし、自分たちだけで潜ればいいのか。
それからは、白浜では夫婦でバディ潜水というパターンになったのです。
少し話が逸れます
では、妻が体調不良で潜れないとか、そんな時はどうしていたのかと言えば、ボートに乗ってポイントに到着すると、単独潜水状態という高待遇になります。
これは皮肉ではなく本当にそう思っていました。近所付き合いの延長のようなものです。
ただツアー客の邪魔にならないよう、一番最初にエントリーして、最後にエグジットするように心掛けていました。
単独潜水だから、他のダイバーに気を使うことも邪魔される事もなく撮影できる。
今の時代、絶対こんな事はないでしょう。場合によっては海上保安庁の監査になってしまうかもしれません。
また、話が逸れます
いつだったか、ボート代もタンク代も要らないと言われた事がありましたが、さすがにそれはダメだと断りました。完全無料のボートダイビングになるのです。
うちの家計を考慮してくれるのは有り難いけれど、もし経営者に知れたらスタッフも私も立場がありません。
次から、ボートを出してくれと言いにくくもなります。
それで単独潜水している時に感じたのですが、一人で海中にいる緊張からか、海水がジヮ〜と体内に浸み込んでくるような気がしました。それと魚たちは明らかに単独潜水している時の方が警戒心が少なく近寄れます。
さらに、話がずれます
そんなダイビングの何度目だったでしょうか、浮上している途中、ガラガラガラという音が海中に響いたのです。
「あっ、アンカー巻き上げてるわ」
減圧のこともあるので、それでもゆっくり浮上して、ぽっかり水面に頭を出すと、非常勤の女性インストラクターが一生懸命アンカーロープを引いていて、私に気付き「あっ、お父さん」と言ってケラケラ笑いました。
当時はまだ娘が幼かった。
この日は、ツアー客で船上は混雑気味だったから大変だったのでしょう。お父さんは完全に忘れ去られていたのです。
陸を観れば、白良浜の人影が肉眼で確認出来たし、まぁのんびり泳いで戻れば大丈夫。
ようやく本題に戻ります
次に考えたのは、白浜以外でもバディ潜水をすること。
白浜以南の海は、白浜と同じ海域の様に思いますが、微妙に変化してゆきます。
私には明確にこれとは言えませんが、生物相や潮流など雰囲気が違ってくる。
そして白浜にはないような、外洋ポイントと言いたくなるポイントがいくつか存在します。
必然的に、妻とバディでそんな外洋ポイントに潜ってみたくなったのですね。
利用するサービスは、(ウエストリゾート:仮名)
以前の記事『水中でしか気付かない人間関係』の記事で登場してもらった、(福山さん:仮名)に相談してみました。
まず初めに、中年夫婦だけで外洋ポイントへ潜る、漠然とした不安
福山さんは少し考えて「大丈夫じゃないですか、ガイドが付くとやっぱり高いですし」
次は、ナビゲーションの不安
もちろんポイント地図を持って入ろうと思っていますが、1,2回しか潜った事のないポイントだと、地形は実感としてほぼイメージできません。その時の透明度も気になります。
「そうですね、流れのある外洋ポイントは、移動せずにアンカーでジッとしていても面白いですよ。回遊魚が回ってくる可能性は十分にあります。視界が悪くてもアンカーから行って来いのナビゲーションを繰り返したら、大丈夫です」
なるほど!
さて次は、最後で最大の不安
このショップではポイントまでの移動は漁協の船を使い、操縦するのもその船の漁師さんです。
つまり、ポイントに到着して流れがあったとしても、それがダイビング可能な流れなのか中止するべきなのかの判断は、私自身かその時の漁師さんな訳です。
漁師は、もうこれ以上ないほどの海のプロです。
しかしダイバーではありません。このことは、全く別の判断を下す可能性が十分にあると、私は考えました。
そして福山さんは、また一考して具体的な解決策を教えてくれました。
ショップの物置から海釣りに使う40号の六角オモリを持ってきて、
「これを道糸に付けてボートから垂らして、フワッとでも持って行かれるようなら止めたほうがいいです」
なるほど、これで次から妻と二人、外洋ポイントへ行ってみる覚悟が出来たのでした。
それから10本以上は、外洋ポイントを潜ったでしょうか。
大丈夫そうでも、一回一回オモリは垂らして確認しています。
妻と二人、緊張しながらも充実したダイビングが続きました。
そういったポイントの中で、私が一番潜ってみたい所がありました。
それは「白方」というポイント。
以前に二度チャレンジしましたが、流れが速く一度しか潜れていません。
妻は一度も潜った事がなかったので、連れて行きたかったのです。
到着して、いつも通りオモリを垂らしてみます。
するとどうでしょう、これまでになかった勢いで道糸が引っ張られて行くではありませんか。
私の判断はこれは到底無理だなと。
ここまで連れて来てくれた船長にも、その様子を見てもらいました。この人はもう70歳は過ぎているでしょう。
ん~、と船長は低く唸り
【もっと流れたら、その流れが一旦岸に当たって、跳ね返りで流れが止まるんやがの】と言うのです。
なんだって!、そんな恐ろしい。
漁師の言う事は本当に凄いと思い、驚きました。
もしそうなったとしても、そんな海に入る気には絶対なりません。
それにその時、流れの角度が変わったり、流れが弱くなったら、どんな事になるのだろうか?
その時の海中を是非とも観たくはあるけれど。
しかたなく穏やかなポイントへ移動しました。
それでも十分に楽しかったのですが。
ダイビングは潜ってみないと分からないし、結果論でもあります。
今回、どうしても私が聞いてもらいたかったのは、この老漁師の言葉です。
漁師などという人種は、たったの一言で私を黙らせ、尊敬させてしまう人種であることがはっきり分かりました。
ベテランの漁師やガイドダイバーたちは、本人が語る言葉を持っていなくても、海の何かを知っているのだろうと思います。
どうでしたか? 海の素人である私の、海での奮闘ぶりが少しでも伝わったでしょうか。
この記事の中には複合的な要素がある為、長い文章になってしまいました。
お疲れ様です。
ではまた、次の記事でお会いしましょう
2022年7月14日 記