こんにちは、「南紀ローカル通信」の枯木屋ユージンです
今回は、リュック・ベッソン監督の映画『グラン・ブルー』のレビューです。
公開:1988年(フランス)132分
監督:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン、ロバート・ガーランド
出演:ジャン=マルク・バール(ジャック・マイヨール)、ジャン・レノ(エンゾ・モリナーリ)、ロザンナ・アークエット(ジョアンナ・ベイカー)
海へ、より深く誘ってくれた映画
音楽と映像の相乗効果
映画を観ていると、それを強く感じることがたまにあります。
こうなると私の場合、評価が跳ね上がってしまうのです。
グラン・ブルーはてきめんでした。
じゃあ、この映画の良さはそれだけなのか?
もちろん、そんなことはありません。
空撮で移動撮影された海面のモノクロ映像
そこへなんともセンスのいい、(エリック・セラ)の曲が流れます。
おそらく音楽だけを聴いたとしても、海の深さ、青さ、安らぎを感じることができる曲でしょう。
次のシーンは、少年(ジャック・マイヨール)が、素潜りで馴染みのウツボがいる海底へ潜行、そこで偶然イルカと出会ってしまい、危うく溺れそうになる場面。
この海中シーンも大胆にもモノクロです。
この間も音楽は流れつづけていて、私は夢の中にいる気分でした。
海に潜りたい気持ちと海への怖さが、同じ質量で膨らんでくる。
この映画のテーマは、海でのフリーダイビング。
海に潜ったことがある人とない人では、映画を観ている時の感じ方が、多少なりとも違ってくるような気もします。
ダイビングをやり始めてすぐの頃に、たまたまこの映画が公開されたので、私にはなおさら印象的な映画になりました。
素潜りで深さを競う 。
これまで、そんな競技があるとは知らなかった。
当時の私にとっては特殊な世界の物語に感じました。これだけでもう、釘付けになってしまいます。
いったいどれだけ息を止めているのか、どこまで深く行ってしまうのか、そんなに行ってまた戻ってこられるのか、観ているほうまで無意識に息を止めてしまう。
そこいらのアクション映画なんかよりよっぽど緊張感がある。
いや、現実感です。
呼吸のことだけではなく、そんなスピードで潜行して耳が抜けるのか、そんな冷たい水に入ってウェットスーツだけ? などなど、大変興味深いことが次々に出てきます。
ごく簡単にストーリーを説明すると
主人公の(ジャック・マイヨール)とライバルの(エンゾ・モリナーリ)
このふたりの競技と友情を軸に、海への畏怖と神秘性が表現されてゆきます。
エンゾ・モリナーリはやたら声が低く、味があって親しみやすい人物として描かれ、
ジャック・マイヨールは物理的な海の深さだけではない、何かの深さ求めているような、どこか浮世離れした人物のように描かれていています。
キャラの違いをを、はっきり色分けしてある。
そのジャック・マイヨールに、恋心を抱く(ジョアンナ・ベイカー)という女性記者が登場します。
ロザンナ・アークエットが演じていて、これがなかなか可愛らしい。
一度顔を見たら、忘れない女優。
もし、ジョアンナ・ベイカーが登場しなかったら、もう少し渋い雰囲気の映画になっていたのかもしれません。
この映画に出てくる海の風景は
それはそれは魅力的です。
これまで私が思い描く、理想的な海の観える風景と言えば、沖縄だったり、東南アジアだったり、南太平洋だったり。
でもこの映画の風景は、ギリシャのなんとか諸島とか、シシリーとか、フランスのアンティーブとか、アモルゴス島とか、地球儀を見てもすぐに探し出せないようなところ。
でも、これがまた良い。
いつか旅してみたいと思わせる風景。
この映画の魅力を下支えしています。
出典:Humberto Flamenco Pixabay
そして結末は
ふたりの競技者の最終的な勝敗が決まりますが、そこで映画は終わらずにラストシーンに入ります。
なかなか不思議な感覚にさせてくれるラストシーン。
結末と言ってもストーリー展開ではなく、ジャック・マイヨールの精神性をあらわしているのでしょう。
海に、グランブルーに、深く魅かれるジャックマイヨールなら、もしかしてとも思ったのです。
恐ろしいようなファンタジーのような、納得いくようないかないような、複雑な気持ちになるラスト。
物語や映画は、どうしても〆が必要なんだなぁ。
わたし個人的にはこの結末、そこそこ気に入っています。
何かに、どうしようもなく深く引き寄せられてしまった人間の心理を表現するなら、これなのかな? と。
いかがですか? 海に潜ったことのない人でも、この映画を観てみたいと思われたでしょうか?
海水浴に行ってそこが自然の海岸なら、一度ゴーグルで海中を覗いてみることをお勧めします。
レビューは以上です。
ではまた、次の記事でお会いしましょう
2021年9月18日 記